「心理的安全性」を高めることの意義
今回は「心理的安全性」を高める意義について書いてみたいと思います。
諏訪部彩は「心理的安全性」を高めることで、以下の3つの効果があると考えています。
✅「分からない」ことを「分からない」と言える安心感が自分の気持ちに素直になれる
✅自分についての自己理解(自分で自分のことを知る)が進む
✅自己理解が進めば、対処方法が分かり、他者とも良好な関係を築き、様々な環境に適応できる
「心理的安全性」とは、自分の素直な意見や気持ちを誰にでも安心して言える状態のことです。もとは、組織行動学を研究するエドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。
「心理的安全性」は、2016年にGoogleが「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」との研究結果を発表したことで注目されました。つまり「心理的安全性」が高い会社・職場は、安心して働くことが出来るので、メンバーのモチベーションが高く、チームワークが良くなり、成果を上げることが出来るということです。誰もがそんな職場で長く働きたい、と考えるでしょう。
お子さんにとっての「心理的安全性」
では、お子さんにとっての「心理的安全性」について考えてみたいと思います。お子さんが多くの時間を過ごすのが学校ですよね。もし、大人が多くの時間を過ごす職場の「心理的安全性」が低かったら、気持ちよく働くことが出来ず、行きたくないな、と思ってしまうのと同じで、お子さんにとって学校の「心理的安全性」が低かったら、熱心に学びたい、行くのが楽しみ、という気持ちにはなれないのではないでしょうか。
「心理的安全性」が低くなる原因として4つの「不安」があると言われています。
1.無知だと思われる不安
質問や確認したいことがあっても「こんなことも知らないのか?ちゃんと話を聞いていたのか?と思われるのでは・・・」と不安になり、気になることがあっても質問しづらくなってしまいます。分かったふりをしてそのままスルーしてしまい、やがて分からないことが積み重なり、勉強が楽しくなくなってしまう、という状態にも陥ってしまいます。
2.無能だと思われる不安
ミスや失敗をした時に「出来ないと思われるのでは」と不安になり、自分の失敗や弱点を認めなかったり、ミスしたことを正直に伝えることをしなくなります。分かったふりと似ていますが「出来ない」ことを素直に「出来ない」と言えない状態です。
3.邪魔をしていると思われる不安
自分が発言することで「話の邪魔をしていると思われないか」と不安になり、提案や発言をしなくなっていきます。子どもは自分が知っていることを言いたい!という気持ちが強いため、発言すべきでない場面で発言してしまう、ということもあります。それで叱られてしまった経験があると、余計にこの状態に陥る場合があります。
4.ネガティブだと思われる不安
人とは違う見方の意見を持ち、言いたいなと思っても「他の人の意見を批判していると否定的に捉えられるのでは」と不安になり、現状の批判をしなくなったり、意見があっても本音で言えなくなったりします。
1クラス30~40人いる集団をまとめていく学校という場では、こういった不安感が比較的生じやすいのではないかと考えています。発達障害のお子さんは余計そうですよね。周囲に合わせることが難しいため、叱られてしまい、落ち込み、不安を抱える、という状態になるために、学校が嫌になってしまう、学ぶことが嫌になってしまう、というわけです。
まずは家庭から安心感のある場をお子さんに
とはいえ、40人の好き勝手を無限に許すわけにはいかないため、仕方がない部分もあるかと思いますが、願わくばお子さんにとって学校が上記の1~4のような不安のない「心理的安全性」の高い場であってほしいと思います。
ただ、現状を変えることが難しいのであれば、家庭などの学校以外の場で、1~4のような不安を取り除き、お子さんにとって「分からない」ことを「分からない」と、素直に言える安心感のある場を作ってあげる。それにより、お子さんも自分の気持ちに素直になることが出来ます。
自分の気持ちに素直になれることによって、自分が出来ること、出来ないこと、好きなこと、嫌いなことなどの自己理解が進むわけです。自分で自分を知ることが出来れば、対処方法も見えてくる。もちろん直ちにというわけではなく、ある程度年齢が進んで成長してからかもしれませんが、他者とも良好な関係を築くことが出来るようにもなり、様々な環境に適応できる力もついていきます。
このように、子どもの時に「心理的安全性」の高い場を確保してあげることで、ただ安心できるというだけでなく、お子さん自身が自分で環境に適応していける力が身についていくと考えています。特に発達障害のお子さんには、大切なことであると考えているのです。
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