発達障害への理解を深める【7】ー二次障害とは
発達障害と向き合う子どもたちが将来自立して幸せに生活できるように
癇癪(かんしゃく)、パニック、他害、自己否定、偏食・・・子どもたちのいわゆる「問題行動」は、発達障害による特性に起因しているのもあるのですが、周囲の人間の無理解や誤った対応によって、引き起こされる、あるいは、行動が強化されていく、というケースが多くあるのです。逆を言えば、周囲の人間が発達障害に対する正しい知識を持ち、個々に合った適切な配慮をしてあげることで、発達障害があるとしても、悩みを抱えたり、生きづらさを感じたりすることなく、日常生活を送ることが出来る、ということです。
とどのつまり、子どもと関わる周囲の人間の正しい理解が大事、ということで、「発達障害への理解を深める」というテーマでシリーズ化して書いています。
発達障害と向き合う親が、発達障害に関する正しい知識を知り、『将来子どもが自立し幸せに生活出来るようになる』ことを目指してサポートする、というポジティブなマインドを前提にした視点から、私なりに情報を集めております。
発達障害および各症状の定義については、厚生労働省作成のホームページから引用させていただき、掲載しています。リンクはページの一番下に記載します。
二次障害とは
発達障害自体は「特性」や「個性」として捉えることも出来るのですが、問題なのは、それにより二次障害が生まれやすいということなのです。
- うつ病
- 不登校
- 引きこもり
- 暴言、暴力などの他害行動
- 対人関係のトラブル、対人恐怖症
- 頭痛、食欲不振、不眠などの身体的不調
これらが発達障害の子どもたちに表れやすい二次障害と言われています。
二次障害を招くメカニズム
- 相手の気持ちを察する、場の空気を読むなどの日本独特の文化が背景にある
- 発達障害の子どもたちはそれらが苦手なため、集団の中で問題児と捉えられやすい
- 先生などの大人から叱責されてしまう場面が多くなる
- 自分の言い分を他者へうまく伝えることが出来ない
- 誰も分かってくれない、認めてくれないと感じ、自己肯定感が低下する
- 二次障害につながっていく
こうして学校や家庭などの社会集団の中で適応できずに、不登校になったり、心身に支障をきたしたりしてしまうのです。
二次障害がいかに危険かを親がしっかりと認識しておく
発達障害の子どもたちへの支援というのは、「二次障害を防ぐ」支援と言っても過言ではありません。
苦手なこと、出来ないことを克服させようと無理をさせたり、ほかの同年代の子どもと比較して親が焦ってしまうのではなく、目の前のその子の様子をよく見て、声に耳を傾け、必要な支援を惜しみなくしてあげることが大切です。そうです。「手のかかる子」なのです。「手のかかる子」なのですから、とことん手をかけてあげて下さい。そして、自分のことをよく理解してくれ、いつもそばで見守って助けてくれる人がいる、という安心感を子どもが持つことが出来ていれば、自己肯定感も育まれます。
そして時期がくればちゃんと、自分の力で頑張ってみよう、難しいことにもチャレンジしてみよう、という意欲が湧いてくるものです。そのタイミングで手を離してあげれば大丈夫です。
また現時点で二次障害の傾向がみられる場合は、早急に手を打つ必要があります。長期間、二次障害の状態が続くと社会復帰が困難になっていきます。
二次障害を防ぐために
二次障害を招くきっかけは、「不登校の要因」や「引きこもりの状態になったきっかけ」の統計データを見ると、『対人関係』が大きな割合を占めていることが分かります。これは発達障害の子どもたちの「コミュニケーションが苦手」という特性に起因しています。
よって二次障害を防ぐために一番大事になるのは、以下の2つの点です。
✅身近な人がよき理解者となり接してあげ「安心・安全な場」を作ってあげること
✅対処の仕方を具体的に教えていくこと
身近な人がよき理解者となり接してあげ「安心・安全な場」を作ってあげること
発達障害の子どもたちは特性上、相手の気持ちを察したり、その場の空気を読んで適切な言葉や行動を選択するのが苦手です。集団の中でみんなの様子を見ながら同じ行動を取ることも苦手です。周りから見るとそれが望ましくない行動だと感じることが多いかもしれませんが、頭ごなしに叱ることはNGです。
必ずその子なりの理由があります。まずは必ず言動の理由を聞いてあげてください。その場は正しい・間違っているというジャッジはせずに、そうだったんだね、と受け止めてあげましょう。
自分の行動の理由や気持ちをうまく表現することが出来ない子もいます。「こういうことだったのかな?こういう気持ちなのかな?」と代弁しながら優しく聴いてあげましょう。
このように、大人が持つ価値観で決めつけることは決してせず、その子が見ている、感じている世界観をひたすら理解することに徹する。これがとても大事です。
ただでさえコミュニケーションが上手ではないのですから、理解してあげることは簡単ではないし、とても時間がかかり、面倒だと感じてしまうかもしれません。それでも理解することに徹してください。その姿勢が、その子にとっての「安心・安全な場」を作ってあげることにつながります。
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対処の仕方を具体的に教えていくこと
子どもと関わる人みんなが理解を示して接してくれればベストですが、小学生、中学生、高校生、大学、社会人と成長するにつれ、活動する世界も交友関係も広がっていき、必ずしも自分に合わせ、理解を示してくれる人ばかりとは限らなくなっていきますよね。
ですから、対処の仕方というのを具体的に教えていくことが大切になります。それは相手に対しての対処もありますし、自分にとってネガティブな出来事があった時に、自分の心を守る対処というのもあります。
発達障害の子どもたちは「暗黙の了解」というのも苦手なので、こんなことは言わなくたって当然分かっているだろう、ということが分かっていなかった、なんてこともよくあります。逆を言えば、ちゃんと教えてあげれば理解して出来るようになることも実はたくさんある、ということです。
「1を知って10を知る」は難しいんだ、ということを念頭に置き、「10教えて10を知ってもらう」つもりで、「分かっているだろう」ではなく「分かっていないかもしれない」と考えて具体的に伝えてあげましょう。
自分にとって嫌なことをされたときにどう対処して良いのか分からない子もいます。「言い返せないからいけないのよ」などと、子どものことを責めるのではなくて、「そういう時は「やめて」と言おうね」というふうに、具体的な言動を教えてあげましょう。
自分と合わない人と無理に関わる必要はないし、全員と仲良くしようと思わなくても良い、誰でも全員から好かれるなんてあり得ないのだから、自分が無理をしないで気持ちよく関われる人と一緒にいれば良い、ということも教えてあげてください。
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参考サイト 厚生労働省|知ることから始めようみんなのメンタルヘルス総合サイト
参考サイト 発達障害ナビポータル